2 台の iPhone、ケーブルを使わない転送、そして「何かが抜け落ちるのでは」という漠然とした不安。短く言えば、古い iPhone がまだ手元にあるならクイックスタート、もう無いなら iCloud から復元、回線がボトルネックならパソコンです。以下は、あまり自明でない部分についての説明です。
3 つの方法と、それぞれが正解になる場面
| クイックスタート | iCloud から復元 | パソコンのバックアップ | |
|---|---|---|---|
| 必要なもの | 2 台の iPhone を並べる | すでに存在する iCloud バックアップ | Mac か PC の新しいバックアップ |
| 速度 | データが多いとき最速 | 回線次第 | ケーブル経由なら速い |
| 向いている場面 | 古い iPhone が手元にある | 古い iPhone がもう無い | 回線が遅い、またはデータが膨大 |
クイックスタートは、2 台の iPhone をピア接続で直接つないでコピーします。クラウドを経由せず、事前の準備も要りません。3 つの中で唯一バックアップが不要で、そのぶん間違いも起きにくい方法です。
iCloud からの復元は、以前に作ったバックアップに依存します。最後のバックアップが 3 週間前なら、3 週間前の iPhone が復元されます。
パソコンのバックアップは、Wi-Fi の代わりにケーブルを使う同じ考え方です。写真が 400GB あって回線が遅い、というときの正解です。
実際に移るもの、決して移らないもの
3 つの方法すべてで移る:連絡先、カレンダー、メモ、メッセージ(iCloud のメッセージを除く)、写真(iCloud 写真をオンにしている場合を除く)、App のデータ、端末の設定、Wi-Fi のパスワード、壁紙、ホーム画面のレイアウト。
どの方法でも自動では移らないもの:
- WeChat、LINE などのトーク履歴。 これらの App は独自のルールで会話を自社サーバーに保管しています。専用の移行ツールがあり、iPhone の移行では履歴は引き継がれません。
- 銀行系・決済系の App。 再ログインと端末の再認証が必要になります。これは移行の失敗ではなく、セキュリティ機構が正しく働いている状態です。
- 認証アプリのコード(2 段階認証)。 クラウド同期のない認証アプリでは、コードは古い iPhone にしかありません。古い iPhone を初期化する前に、新しい iPhone を認証アプリとして設定してください。 そうしないと自分のアカウントから締め出され、なかには簡単な復旧手段が無いものもあります。
- eSIM。 物理 SIM はそのまま新しい iPhone に移せます。eSIM は通常、通信事業者による再発行か移行が必要です。クイックスタート中の移行に対応する事業者もありますが、対応していない場合も多いです。電話かアプリでの手続きを想定しておきましょう。
- Apple Watch。 Watch は同時に 1 台の iPhone としかペアになりません。まず古い iPhone からペア解除します(これで Watch の新しいバックアップも取られます)。その後、新しい iPhone とペアにします。
- Apple Pay のカード。 引き継がれません。もう一度追加します。
- Bluetooth のペアリング情報(ほとんどの車載システムを含む)。
iCloud バックアップに実際に含まれるもの
ここが最も混乱を生む部分なので、はっきり書きます。iCloud バックアップは、すでに iCloud にあるものを除外します。
iCloud 写真をオンにしていれば、写真はバックアップに入りません。写真は iCloud にあり、同期で戻ってきます。連絡先、カレンダー、メモ、iCloud のメッセージも同じです。だから 200GB の写真を抱えた iPhone のバックアップが 4GB になり、それは壊れているのではなく正常なのです。
始める前に知っておくべき帰結が 2 つあります。
- 最後のバックアップの日付とサイズを確認する(古い iPhone で
設定 → [自分の名前] → iCloud → iCloud バックアップ)。3 週間前のバックアップは、3 週間前の iPhone を復元します。 - バックアップは App の非公開データのコピーではありません。 App が自社サーバーに置いているものは、どの iPhone のバックアップにも入りません。だからこそトーク履歴には専用の移行手順が必要です。
所要時間の目安
- クイックスタート —— 直接接続でおよそ 100GB あたり 1 時間。ほぼ満杯の iPhone なら一晩かかることがあります。
- iCloud からの復元 —— 回線次第。下り 50Mbps なら 100GB で 4〜5 時間ほど。
- パソコン —— データが多い場合はケーブル経由が通常最速で、100GB あたり 1〜2 時間。
いずれの場合も、残りがバックグラウンドで進む間、iPhone は一部使えます。転送中は両方の iPhone を電源につないでおいてください。
移行後に実行する確認リスト
- メッセージ系の App を開き、履歴が無ければ各社の専用ツールで移行する(WeChat、LINE、WhatsApp にそれぞれあります)
- 銀行系・決済系の App にログインして再認証し、必要ならカードを追加し直す
- 認証アプリをテストする。頼る前に、実際にコードを生成してみます
- eSIM をテストする。通話を 1 本かけ、モバイルデータを使います
- Apple Watch を再ペアリングする(まだなら先に古い iPhone からペア解除)
- Apple Pay にカードを追加する
- iCloud 写真とメッセージの同期完了を待つ(
設定 → [自分の名前] → iCloudで進捗が見えます) - ここまで来てから古い iPhone を初期化する。Apple ID からサインアウトし、そのうえで消去します
捨ててよい 2 つの思い込み
「バックアップに全部入っているから安心」。 バックアップは完了していて初めて役に立ち、App が自社サーバーに持つデータは決して含みません。始める前に日付とサイズを確認し、トーク履歴は別の作業として扱ってください。
「古い iPhone を初期化して売ればいい」。 初期化とApple ID からのサインアウトの両方が必要です。消去だけではアクティベーションロックが残り、次の持ち主にとっては文鎮になります。そして、認証アプリのコードの唯一のコピーがその iPhone にあったなら、自分自身を締め出したことになります。